大家さんの家賃設定
どうでもいいような内容で恐縮です、書くことがなくて。そんな今回の内容は、大家さんが店子を募集するときに家賃をいくらにするべきか、言いかえると、家賃を安くしてでも早く店子を入れるべきか、はたまた家賃を高くしたまま募集を続けるべきかを考えていきたいと思います。
家賃の決まり方
家賃をいくらにするか、どうやって決めていますか?不動産屋さんに言われたとおり、という方が多いのではないかと思います。
不動産屋さんはなるべく高い家賃にしたほうが仲介手数料をたくさんもらえますし、店子を早く決めてしまって仲介手数料をもらいたいとも思っているはずです。だから、不動産屋さんの言いなりというのはある意味ではいいと思います(まともな不動産屋さんとおつきあいしているという前提の下ですが)。
しかし、賃貸経営も商売のひとつです。言いなりでいいかもしれないけれど、自分で考えて判断することも必要だと思います。
住宅の場合
住宅の場合、家賃についてはそれほど検討する余地は少ないかなと思います。金額がそれほど大きくありませんし、競合物件がまわりにたくさんあるので、相場は誰の目にも明らかになっています。家賃よりも重要なのは店子さんの審査だと思います。家賃滞納して居座られるのが一番困りますが、大家さんの確定申告をしていると滞納を結構見ます。
それから、丁寧に使うかどうか。退去時に原状回復費用をなかなか取れない時代になってきているのではないかと思います。そう易々と支払ってくれなかったりするのではないでしょうか。もしそうだとすると、丁寧に使ってくれないと困ります。収入面や信用面の審査だけでなく、人柄についても不動産屋さんによく吟味してもらうようにしましょう。
また、学生向けなどの住宅は、お部屋探しの時期が1~3月に集中してしまいますので、とにかくその間に決めてしまうというのも大事かなと思います。
事業用物件の場合
こちらが今回の本題でした。店舗などの事業用物件の場合です。事業用物件は住宅とは正反対。家賃が高くて、類似の競合物件はあまりありません。競合物件があってもだいたいふさがっていて、ほかに空いているところはないか、あっても少ないというのがほとんどでしょう。
店子にとって事業用物件は外部(集客力)と内部(使い勝手)が重要です。そう考えると事業用物件はオンリーワンな性格が強く、単純に比較できるような物件はそもそもないと思います。
つまり、家賃の相場情報が存在しない・あまり流通しないので、家賃についての検討余地は多分にあると考えられます。骨董品などと同じくオンリーワンだと値段があって無いようなものですから、相対取引の性格が強くなります。下品な言い方をすれば「ぼったくれる」ということでしょうか。上品に言うと、価値を感じてくれる相手なら高い家賃でも借りてくれるということです。
しかし反対に、こちらの足元を見られて、ずいぶんと値切られてしまうということもあるかもしれません。大家さんにも不動産屋さんにも、駆け引き力が求められます。
累積家賃の比較
家賃を下げれば下げるほど早く店子が決まるでしょうし、家賃を譲らなければ譲らないほど店子がなかなか決まらないでしょう。この前提に立って、シミュレーションをしてみたいと思います。
パターンAは家賃50万円で募集を開始しすぐに決まった場合。パターンBは家賃60万円で募集を開始してから半年後に決まった場合。パターンCは家賃70万円で募集を開始し店子が決まるまで1年かかった場合です。各時点での累積の家賃を表にしてみます。なお、表中の金額単位は万円です。
パターン | 1年後 | 2年後 | 3年後 | 4年後 | 5年後 |
---|---|---|---|---|---|
パターンA | 600 | 1200 | 1800 | 2400 | 3000 |
パターンB | 360 | 1080 | 1800 | 2520 | 3240 |
パターンC | 0 | 840 | 1680 | 2520 | 3360 |
こうして見ますと、パターンBは3年後に・パターンCは4年後にパターンAに追いついています。その後は当然家賃の高いパターンが追い越していきまして、5年後の時点でパターンCはAよりも360万円多い結果となりました。1年待ってでも家賃設定を譲らずに待ったほうが長い目で見て好結果ということが言えるかと思います。
しかし店子からすれば、家賃が高いほど商売のハードルは高くなります。すなわち、廃業や移転などで退去する確率が高まってしまいます。その点も念頭に置きながらちょうどいい塩梅を探ってください。それには店子の商売に興味をもって日頃から観察することをおすすめしたいと思います。
まとめ
家賃設定について考えてみました。考えてみてわかったのは、不動産屋さんとのおつきあいが大事だなということです。不動産屋さんとは利害が一致することもあれば、一致しないこともあると思いますが、うまくつきあっていきたいところです。仲介手数料以外にも、管理手数料や更新手数料などお金の支払い方を工夫して不動産屋さんの気持ちをこっちに引き寄せたいところです。
事業用物件でしたら、家賃を低く抑えても安定して入居してもらいたいのか、それとも退去リスクがあっても家賃を高めにしたいのか、大家さんはどちらの考えなのか日頃から不動産屋さんに伝えておいたらいいと思いました。
2021月7月21日