収入が不安定な商売
お笑い芸人さんたちが反社問題で営業自粛しています。また、芸能界から干されたとか、干すのは問題だと公取委が指摘したとか、いろいろあります。
活動自粛している芸人さんが、もし今後活動できなかったら可愛そうです。収入がなくなってしまいますから今の生活水準を維持できなくなってしまうんじゃないか?と他人ながら心配してしまいます。しかし一方では、今までたくさん稼いだからもういいんじゃないか?とも思ってしまいます。
プロスポーツ選手も同様です。一時はものすごく稼ぎますが、その後引退したら収入がなくなって大変なんじゃないかな?と心配になる一方で、でも、現役時代にたくさん稼いだからいいんじゃないかな?とも思ってしまいます。
はたしてどちらが正解なのでしょうか。税金の視点から見ていきたいと思います。
生涯所得が同じでも
太く短く稼ごうが、細く長く稼ごうが、もし同じだけ稼ぐんなら変わらないように思えます。たとえば10年間で毎年1億円づつ稼いでも、50年間で2千万円づつ稼いでも、総額は10億円ですからどっちでもよいような気がします。たしかに生涯収入は同じになりますが、しかし、税金については大きくちがいが出てしまいます。
適用される税率が異なる
個人の税金のうち、所得税は超過累進税率といって、その年の稼ぎが多ければ多いほど、高い税率の税金が課税されます。ですから、太く短く稼ぐタイプの人は毎年高い税金を負担しています。具体的には、1億円稼ぐとそのうちの半分以上の部分は55%(所得税45%、住民税10%)課税です。仮に55%課税対象が5千万円だったとすると、その部分だけで2750万円の税負担となります。
余談ですが、ある営業自粛している芸人さんは100万円の収入を申告もれしていたそうで修正申告をされたそうですから、100万円の55%=55万円の税金プラスペナルティが追徴課税されたのではないかと推測できます。うっかりでも大きな金額ですから、当局は今秋からの税務調査、芸能人を強化してせざるを得ないでしょうね。
話が逸れました。一方、細く長くタイプの人は相対的に税率が低くて済みます。所得税の低いほうの税率はとことん低いです。15%とか20%とか30%とかです。30%を超えるのはよほどの人です。年収1000万円のサラリーマンでもおそらく超えないだろうと思います。
一生涯の通算適用税率
以上見てきたとおり、個人の税金は一生涯単位ではなく、年単位に計算します。そしてある年の稼ぎが多すぎると高い税率が適用されてしまう、反対にほどほどだと低い税率が適用されるということです。このことから、一生涯のうちの一定期間に集中して稼ぐよりも、細く長くタイプのほうが一生涯の稼ぎに対する通算の適用税率は低くなる傾向だということが分かります。
渦中の芸人さんが干されても今までたくさん稼いだんだからもういいんじゃない?というのはちょっとちがいます。たくさん稼いだ年は高い税率によってたくさん税金を納めていますから、稼ぎまくったわりには手取りは少なかったでしょう、というのが今回の結論になります。早く復帰できるといいですね。
スポーツ選手は現役時代に年俸ばかりを追い求めず、引退後もフロントやコーチスタッフとして面倒をみてくれるチームで功績をあげたほうが器用な生きかたではないかと思います。