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インボイスと自宅兼事務所

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インボイスと自宅兼事務所

消費税のいわゆるインボイス制度導入が近づいてまいりました。同制度のスタートは来年10月ですが、その時に動き出すのではなく、今のうちから準備しましょう。私もまだあんまりしっくりきていないので、とっかかりやすいところから、少しづつ見ていきたいと思います。第5回目の今回はインボイスと自宅兼事務所についてです。

自宅兼事務所

自宅兼事務所とは、会社経営でのスキームのひとつです。経営者の自宅の一角を事務所などとして使用している場合に、その自宅の一角を会社に「貸す」、会社はその一角を事務所などとして「借りる」ことで会社の業務に使用します。

貸し借りになりますから、賃料のやりとりが生じます。会社は家賃が経費になります。一方、経営者においては賃貸収入(不動産所得)になります。

インボイス制度になると

インボイス制度になって影響があるのは、会社が実額計算をする課税事業者である場合です。簡易計算をする課税事業者・免税事業者の会社は影響ありません。今までどおりでいいでしょう。

実額計算をする課税事業者である会社は、家賃について取引相手、つまり経営者個人からインボイスをもらえないと仕入税額控除できなくなります。

おそらく現在は仕入税額控除しているでしょうから、それができなくなるということになります。とはいえ多くの場合個人は免税事業者でしょうから、現在仕入税額控除しているというのはいわゆる「益税」であって、得していたのがなくなるだけです。損するわけではありません。

経過措置が効く

仕入税額控除には6年間の経過措置については前回のコラムで取り上げました。自宅兼事務所についても、経過措置を適用することができます。

つまりどういうことかというと、インボイスがなければ仕入税額控除できないのが原則ですが、経過措置により、6年間は消費税相当額の一部を仕入税額控除できるというわけです。

たとえば、家賃を月11万円としている場合。インボイス制度スタートから3年間は、11万円の10/110(=1万円)の80%、つまり8千円を仕入税額控除できます。さらにその後の3年間も、50%(5千円)を仕入税額控除できます。

ということで、インボイス制度が始まると同時に「益税」がなくなってしまうわけではなく、6年かけて次第になくなっていくことになります。

個人が課税事業者になるか

応用編。個人があえて課税事業者・インボイス発行事業者になって、インボイスを交付するとどうなるでしょうか。

会社はインボイスをもらいますので、家賃について仕入税額控除できます。個人は課税事業者ですので家賃の消費税について納税義務が生じます。

それだけだとプラスマイナスゼロであえて課税事業者になる意味がないのですが、個人の消費税計算においても仕入税額控除があります。これを含めると多少なりとも得になりそうな感じがします。

ただ、自宅兼事務所だと必要経費は固定資産税と減価償却費くらいしかありません。どちらも消費税は無関係ですので仕入税額控除できる金額はないように思えます。

そういう場合は、個人は実額計算ではなく簡易計算を選択しましょう。不動産賃貸業の場合、簡易計算のみなし仕入率は40%です。つまり、家賃収入に係る消費税の40%を仕入税額控除できるということです。

たとえば、先ほどのケースでいうと家賃11万円の消費税が1万円、簡易計算による仕入税額控除額は1万円の40%ですので4千円となり、納税額は差し引き6千円となります。

トータルで見ると、会社は1万円控除する、個人は6千円納税するということになります。その結果消費税は4千円お得になるというわけです。

2022月9月3日


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