まつきよ税理士事務所

インターネットで海外向けにサービスしたときの消費税

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インターネットで海外向けにサービスしたときの消費税

実務で興味深い事例がありました。インターネットを介して、具体的にはZoomを利用して、海外の人に相談サービスを提供したときの消費税はどうなるのかです。

直感

海外の人からすれば「なんでワタシが日本の消費税を負担しなければならないですか?」と思うでしょう。直感は大事、たしかにその通りです。しかし税金は税制どおりに納めなければなりません。では、税制はどうなっているのでしょうか、見ていきましょう。

電気通信利用役務の提供

消費税法では、インターネットを介した相談を「電気通信利用役務の提供」と定義し、そのほかの一般的な役務の提供と区別しています。消費税法第二条(定義)第八号の三にはこのように規定されています。

八の三 電気通信利用役務の提供 資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物(中略)の提供(当該著作物の利用の許諾に係る取引を含む。)その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供(電話、電信その他の通信設備を用いて他人の通信を媒介する役務の提供を除く。)であつて、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいう。

インターネットを介した相談は「電気通信回線を介して行われる役務の提供」ですので、電気通信利用役務の提供に該当するものと私は判断しました。

課税の対象

続いて、その取引が課税の対象になるのかどうかを判断します。消費税法第四条(課税の対象)の第一項にはこのように規定されています。

国内において事業者が行つた資産の譲渡等(中略)には、この法律により、消費税を課する。

国内において行ったかどうかが判断の基準になりそうです。どこで行ったか、イメージとしてはインターネット上なんですけども、どうなんでしょうか。次に同条第三項を見てみましょう。

資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める場所が国内にあるかどうかにより行うものとする。ただし、第三号に掲げる場合において、同号に定める場所がないときは、当該資産の譲渡等は国内以外の地域で行われたものとする。

各号に定める場所が国内にあるかどうか、だそうです。第三号が電気通信利用役務の提供である場合ですので、そちらを見てみましょう。

三 電気通信利用役務の提供である場合 当該電気通信利用役務の提供を受ける者の住所若しくは居所(現在まで引き続いて一年以上居住する場所をいう。)又は本店若しくは主たる事務所の所在地

サービスを受ける人の住所などが国内にあるのかどうか、で判定するのだそうです。そうすると、海外在住の人の相談に応じた場合は、国内において行ったことにはなりませんので、その取引は消費税の課税対象にはならないと考えることができます。

第三号のカッコ書き

少し注意が必要なところ。先ほど見た第三号(電気通信利用役務の提供である場合)のカッコ書きです。「住所」は消費税法内で定義されていませんが、民法第二十二条(住所)でしょうか、それによると住所とは生活の本拠だそうです。「居所(一年以上うんぬん)」は、民法第二十三条(居所)がありますが定義らしい文言になっていませんので、もう参照するところはありませんが、生活の本拠に準ずるようなところでしょうか。ワケありな人でしょうか。

もともとの海外の外国人なら住所は海外にあるのがほとんどだと思います。他方、日本在住の人が海外旅行中に現地から相談してきた場合などは、住所は国内にあるけども一時的に海外にいるだけなので、国内において行ったに該当します。よって、消費税の課税対象となるでしょう。

そのことが消費税法基本通達5-7-15の2(電気通信利用役務の提供に係る内外判定)にあります。

5-7-15の2 電気通信利用役務の提供が国内において行われたかどうかの判定は、電気通信利用役務の提供を受ける者の住所若しくは居所(現在まで引き続いて1年以上居住する場所をいう。)又は本店若しくは主たる事務所の所在地(以下5-7-15の2において「住所等」という。)が国内にあるかどうかにより判定するのであるから、事業者が行う次のような電気通信利用役務の提供であっても、国内取引に該当する。  なお、電気通信利用役務の提供を受ける者の住所等が国内にあるかどうかについては、電気通信利用役務の提供を行う事業者が、客観的かつ合理的な基準に基づいて判定している場合にはこれを認める。(平27課消1-17により追加)
(1) 国内に住所を有する者に対して、その者が国外に滞在している間に行うもの
(2) 内国法人の国外に有する事務所に対して行うもの

実際はどうする

国内の人が相手なら消費税が課税される、国外在住の人が相手なら消費税が課税されない。その区別をどうやってするかが問題です。なにせインターネット上での取引ですから、相手が実際どこにいるのかは把握できないはずです。日本でいうところの本人確認書類でも提出してもらいますか、それでもなりすましは避けられません。相手のIPアドレスから地域を割り出しますか。いずれもそんなことはしてらんないのではないかと思います。つまり、クソ真面目に判定しようとしても困難なのです。

じゃあどうしたらいいんでしょうか。先ほどの通達の尚書き(なお、以降の文)を見てみましょう。相手の住所などがどこなのかは「客観的かつ合理的な基準に基づいて判定している場合にはこれを認める」だそうです。あくまでも法令ではないので、認めるってなんかお門違いにも程があるようなかんじもしますが、参考になるかと思います。つまり、真実がどうなのか、そこまで追及しなくても、なにか基準を持って判定しているなら、それでいいんでないかということです。

たとえば、お住まいの住所や地域名を自己申告してもらい、それを記録している。そのうち日本から出国して海外在住の人についてはビザの種類までヒアリングし、記録しておくなど。もしくは、インターネット上のプラットフォームを利用する場合には、そのプラットフォーマーから提供される情報をもとに判定しているなど。それなら、通達でいう「客観的かつ合理的な基準に基づいて判定している場合」に該当するのではないかと私は思いました。

まとめ

インターネット上で海外の人と取引しようとすれば、プラットフォームを利用するほうがケースとしては多いでしょうか。ぜひともプラットフォーマーにはそういったところもシステム対応していただきたいと思います。

2021月11月27日


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