まつきよ税理士事務所

ここがヘンだよ日本の税制(1回目)

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ここがヘンだよ日本の税制(1回目)

とにかく書くことが見当たらない、しかし更新しないといけないしなぁ。そうは言っても不平不満しかネタがないしなぁ。ということで、日頃税理士をしている中でこれはおかしいなぁと思っている税制をいくつかご紹介したいと思います。実務上は何も役に立ちませんが、雑学もしくは国政選挙の投票行動に生かしてください。記念すべき1回目は給与所得控除についてです。

給与所得控除とは

給与所得控除は所得税および住民税の税制です。サラリーマン(会社員やアルバイト・公務員など)の給与収入(年収)は給与所得に分類されます。給与所得は、給与収入(年収)丸ごとではなくて、年収から給与所得控除を差し引いた金額となります(下記計算式)。サラリーマンの所得税や住民税はこの給与所得をもとに計算していきます。

給与所得 = 給与収入 - 給与所得控除

給与所得控除のイメージは「みなし経費」です。「概算経費」とも言われます。反対は「実額経費」です。自営業のかたは「実額経費」で計算していますよね。レシートの金額を一枚一枚集計して必要経費としているはずです。給与所得控除はそうではなくて、給与収入(年収)に応じて自動的に金額が決まります。レシートを保管しているかどうか・実際に買い物したかどうかは関係ありません。

このように、給与収入(年収)に対する所得税と住民税は、年収丸々が計算対象になるわけではなく、給与所得控除分ディスカウントされて計算されるということです。その結果、当然のことながら所得税と住民税の年税額は少なくなります。まさにサラリーマンにとってはお得な制度です。

どれくらいお得か

次に、給与所得控除の金額を見ていきましょう。前述のとおり、給与所得控除の金額は年収に応じて自動的に決まります。年収が多いほど給与所得控除の金額も多くなります。レンジは55万円から195万円です。いくつか例を挙げてみました(万円単位)。

給与収入
(年収)
給与所得
控除
給与所得
55 55 0
300 98 202
400 124 276
500 144 356
600 164 436
700 180 520

例えば上から3行目の年収400万円の場合、給与所得控除は124万円、差し引き給与所得は276万円です。給与所得控除が124万円ということは、月換算すると毎月約10万円の経費を自腹で負担しているイメージです。年収400万円の人がそんなに使わないだろうと思いますけどね、一番使う人に合わせているんじゃないかなと思います。でもそんなに使ってたら税金や社会保険料の負担もありますから、可処分所得は200万円を下回ってしまうんじゃないかな。なんか現実的ではないように思います。

一番下の行の年収700万円の場合、給与所得控除は180万円です。月換算すると毎月15万円。そんなにお金つぎ込んでいいスーツ仕立てたら、社長よりいいカッコになってしまいますよ!それとも、後輩の面倒を見るっていって晩ご飯おごったりするんでしょうか、相当タチの悪い後輩をお持ちで大変ですね。といったイメージでしょうか。

一番上の行にありますが、年収55万円までは給与所得は0円です。もしもこれが現実を反映しているのであれば、年間55万円以下にしかならないアルバイトはしないほうがマシとなってしまいます。

いかがでしょうか。いくら「みなし経費」とはいっても、本来はできるだけ実額に近い金額であるべきです。しかし、給与所得控除の金額はかなり大きな金額に設定されていると、私は思います。そもそも、業種とか・職種とか・役職ごとに別設定にしないで、みんな一律の金額設定だというのに無理を感じます。

特定支出控除もあるのに

特定支出控除という制度もあります。これは実額が給与所得控除の金額の半分を超えている場合に、その超える金額を追加で引くことができるというものです。こういう制度もあるので、給与所得控除はレンジを下げてもよいのではないかと思います。

提言

給与所得控除はいくらなんでも金額が大きすぎます。実額との乖離が大きすぎると思います。レンジを下げるべきでしょう。

昭和の時代とは事情が変わってきているのかもしれません。通勤手当は満額支給されることがほとんどでしょうし、コンプライアンス意識の高まりから自腹で社外接待というのも減っているのではないでしょうか。もしそうであれば、時代の変化に応じて税制は変化していかなければなりません。

たとえば、年収の金額に関係なく、青色申告特別控除と同額(55万円ないし65万円)程度にするのはどうでしょうか。それくらいでだいたいの人は足りるでしょう。足りないなら特定支出控除を利用すればよい。それでも足りないなら、おそらくその仕事はサラリーマン向きの仕事ではないということです。

まとめ

給与所得控除、実を言うとこの10年弱くらいの間に、レンジの上限を新設したり(それ以前は上限がなかった)、上限額を引き下げたり、昨年分からは一律10万円下げたりと、チマチマと手を加えられてはいます。しかしながら、チマチマはいらんのです、抜本的に改正するのです。5年後までに一律65万円にする、そこに向けて5年かけて徐々に逓減させていくっていうようなチマチマならいいですけどね。

2021月8月21日


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