まつきよ税理士事務所

為替の著しい変動

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為替の著しい変動

最近の業務報告です。為替が大幅に変動したときの税務上の取り扱いを確認します。

令122の3

法人税法施行令第122条の3第1項に規定されています。

内国法人が事業年度終了の時において有する外貨建資産等(当該事業年度において前条の規定を適用したもの及び第百十九条の二第二項第二号(有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法)に掲げる株式又は出資に該当するものを除く。以下この条において同じ。)につき当該事業年度においてその外貨建資産等に係る外国為替の売買相場が著しく変動した場合には、その外貨建資産等と通貨の種類を同じくする外貨建資産等のうち外国為替の売買相場が著しく変動したもののすべてにつきこれらの取得又は発生の基因となつた外貨建取引を当該事業年度終了の時において行つたものとみなして、法第六十一条の八第一項(外貨建取引の換算)及び第六十一条の九第一項(外貨建資産等の期末換算)の規定を適用することができる。

かっこ書きに一部例外が示されていますが、それ以外の外貨建ての資産などについて、取得したときのレートと比べて期末のレートが著しく変動した場合は、取得したときのレートではなくて、期末のレートで取得したものとみなすことができますよということです。

たとえば、トルコリラ建ての債券を100万リラ購入したとします。このときのレートは18円/1リラでした。つまり1800万円で購入しました。

期末になりましてレートを確認したところ、あらら、13円/1リラになっていました。期末時のレートで円換算すると1300万円に急落してしまったことになります。もし嫌気がさしてここで売却したら、1300万円しか回収できないということです。

こういったときに、税金の計算上、1800万円で購入したのではなくて、1300万円で購入したものとしてもよいですよというのが上記の規定です。したがって、含み損の部分(500万円)を為替差損とすることができるのです。

外貨建ての資産などをいつのレートで円換算するか、それは2通り方法があって、モノによってはどちらかを選ぶことができます。1つは取得時のレートで行う方法、もう1つは期末のレートで行う方法です。期末のレートで行う方法を選択すればいいじゃんと思われるかもしれませんが、そうしてしまうと、もし翌期に為替が倍返しで上がってしまうと今度は逆に利益が生じてしまいます。実現していない利益が生じ、それに課税されてしまうことは資金繰り上たいへんにリスクですので好ましくありません。しかし、上記の規定によれば、そうした心配がなく、急落したときだけ適用することができます。

著しい変動とは

では、上記の規定にある「著しく変動した場合」とはどんな場合を指すのでしょうか。文字通りでよいとは思いますが、法人税法基本通達13の2-2-10(為替相場の著しい変動があった場合の外貨建資産等の換算)がありますので参考にしましょう。

 事業年度終了の時において有する個々の外貨建資産等(令第122条の3第1項《外国為替の売買相場が著しく変動した場合の外貨建資産等の期末時換算》に規定する外貨建資産等に限る。以下13の2-2-10において同じ。)につき次の算式により計算した割合がおおむね15%に相当する割合以上となるものがあるときは、当該外貨建資産等については、同項に規定する「外国為替の売買相場が著しく変動した場合」に該当するものとして当該外貨建資産等の額(帳簿価額として付されている金額の外貨表示金額をいう。)につき同項の規定に基づく円換算を行うことができる。
(算式)(当該外貨建資産等の額につき当該事業年度終了の日の為替相場により換算した本邦通貨の額-当該事業年度終了の日における当該外貨建資産等の帳簿価額(同日における同項の規定の適用前の帳簿価額をいう。))÷当該外貨建資産等の額につき当該事業年度終了の日の為替相場により換算した本邦通貨の額

前述の事例をあてはめますと、(1300-1800)/1300=-0.38...したがって15%以上となり著しく変動した場合に該当するとしました。

まとめ

この件はお客様との打ち合わせにて気づいた規定でした。試験勉強の時にちらっとやったような記憶がありましたが忘れかけていました。著しく変動しやすい新興国通貨ならではの事例でした。とはいえ、トルコリラ建ての債券なんてそもそも購入しないほうがいいと思います。金融機関はじぶんがお金があったら買うものだけを顧客にすすめるべきです。

2020月12月9日


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