まつきよ税理士事務所

新型ウイルス流行に伴う消費税タックスプランニングの修正

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新型ウイルス流行に伴う消費税タックスプランニングの修正

新型ウイルス流行によって経営状況に大きな影響を受けている事業者の方は多いと思います。目下の状況はおろか、今後の見通しも大きく変わってしまったかもしれません。

こんなときに気がかりなのは消費税のタックスプランニングです。消費税のタックスプランニングは2~3年先の見通しをもとに行う必要があるものですが、せっかく見通しを立てて対策を講じてあったのに予定どおりにいかなくなったとしたらたいへんです。

そこで、災害時などのための特例制度に加え、緊急経済対策の一環として新たな特例も用意されました。通常のタックスプランニングは「事前」の届け出が原則ですが、これらの制度を活用することによって急遽変更できる場合もありますのであきらめずにご検討ください。

簡易課税をやめるには

税務署に届け出なければならない消費税のタックスプランニングには主に、①消費税なしか還付か、②概算納税(簡易課税)か実額納税(一般課税)か、の2つがあります。

今回は②がテーマです。このうち、一般から簡易にしたいというのはあまりないかなと思います。反対に、簡易から一般にしたいという方は多いのではないかと思いますのでそちらを見ていきたいと思います。

というのも、業績が悪化(売上が減少したのに固定費が減らない)したり急な出費があった(経費率が上昇した)場合は、簡易よりも一般のほうが納税額が少なくなりがちだからです。

簡易から一般にするには、消費税法37条の2(災害等があった場合の簡易課税の届出に関する特例)を用います。

災害等があった場合の簡易課税の届出に関する特例

消費税法37条の2(災害等があった場合の簡易課税の届出に関する特例)の第六項を引用します。

災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた事業者(前条第一項の規定の適用を受ける事業者に限る。)が、当該被害を受けたことにより、当該災害その他やむを得ない理由の生じた日の属する課税期間(当該課税期間の翌課税期間以後の課税期間のうち政令で定める課税期間を含む。以下この項において「不適用被災課税期間」という。)につき同条第一項の規定の適用を受けることの必要がなくなつた場合において、当該不適用被災課税期間につき同項の規定の適用を受けることをやめることについてその納税地を所轄する税務署長の承認を受けたときは、当該事業者は同条第五項の規定による届出書を当該承認を受けた不適用被災課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなす。この場合においては、同条第六項の規定は、適用しない。

平たく要約するとこうです。簡易課税を選択している事業者のみなさん、災害その他やむを得ない理由によって、簡易課税を選択する必要がなくなった場合には、税務署長に申請書を提出してください。もし税務署長が承認したら「事前」に届け出てたことにしてあげます。ということです。

いつでも使える制度ではありません。「災害その他やむを得ない理由により被害を受けた」時限定です。その「災害その他やむを得ない理由」については、消費税法基本通達の13-1-7にあります。おおむね次に掲げるところによるそうです。

また、国税庁のパンフレットにはこのようにあります。「例えば、今般の新型コロナウイルス感染症等の影響による被害を受けたことで、感染拡大防止のために緊急な課税仕入れが生じたため一般課税へ変更したいなどの事情がある事業者は(以下省略)」
国税庁「消費税の課税選択の変更に係る特例について(詳細版)」

どうやら新型ウイルス流行自体は災害のひとつとして対象になるようです。では具体的にどんな影響があったら対象になるか。はっきりは書いていませんが、だいたい対象に入るのではないでしょうか。

もうひとつのポイントは「この場合においては、同条第六項の規定は、適用しない。」の部分です。同条第六項とは消費税法37条第六項を指しますが、これはいわゆる2年縛りのことを指します。簡易課税は通常、ひとたび選択したら2年間は継続しないといけません。しかし、この特例では2年縛りは気にしなくてよいのです。

つまり、今年から適用する予定だった方も、昨年1年適用しただけの方も、こういうときはおまけして中途解約が可能ということです。

具体的な手続きは

さいごに具体的な手続きについてです。この特例を受けるためには、新型コロナウイルス感染症等の影響による被害がやんだ日から2月以内※に「災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」と併せて、「消費税簡易課税制度選択(不適用)届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要がありますので、提出する方はなるべく早く検討をはじめましょう。

2020月6月3日


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